2025/08/22 / 最終更新日時 : 2025/08/29 mediva 【健康経営度調査対応】測定するだけで終わらせない、健康経営を推進するプレゼンティーズム調査とは(ウェビナーレポート) 健康経営の推進が企業にとって不可欠な時代となり、従業員の生産性低下を数値化する「プレゼンティーズム」の調査を行う企業が増えています。しかし、「調査はしてみたものの、具体的な改善策が見つからない」「結果をどう評価していいか分からない」といった声も多く聞かれます。 本記事では、ただプレゼンティーズムを測定するだけでなく、その結果を具体的なアクションに繋げ、施策のPDCAサイクルを効果的に回すための指標の選び方と実践例を、健康経営の専門家である株式会社メディヴァの知見を基にご紹介します。 *本記事は弊社産業医兼コンサルタントの澤井が、株式会社バックテック様主催のウェビナー:「結果を見て終わり」を卒業!アクションにつながる生産性指標の取り方と実践例に登壇した内容を記事にしたものです。 目次 「結果見て終わり」を卒業するための3つのポイント メディヴァが推奨する「SPQ」と「QQメソッド」のハイブリッド活用法 ハイブリッド運用の実践例 まとめ:健康経営を「測定だけ」から「成果創出」へ 「結果見て終わり」を卒業するための3つのポイント 生産性調査を単なる「結果見て終わり」で終わらせないためには、調査の設計段階から以下の3つのポイントを意識することが重要です。 1.経営的なインパクトがあること 調査結果が経営層の意思決定に繋がるものでなければ、継続的な予算やリソースの確保は困難です。 「従業員一人ひとりのパフォーマンス低下が、年間でどれくらいのコスト損失になっているか」といった、経営の視点に立ったインパクトのある数字を示すことが求められます。 2. 改善施策に活用できること 調査の目的は、単に現状を把握するだけでなく、課題を解決するための具体的なアクションを起こすことです。 どの健康課題がどのくらいの重みで生産性低下に影響しているかを特定できる指標を選ぶことで、効果的な施策の企画が可能になります。 3.施策の成果を評価できるアウトカム指標になること 施策を実施した後は、その効果を測定し、PDCAサイクルを回すことが重要です。 施策の前後で指標がどう変化したかを客観的に評価できる仕組みを組み込むことで、より良い健康経営へと改善していくことができます。 メディヴァが推奨する「SPQ」と「QQメソッド」のハイブリッド活用法 これらのポイントを実践するために、私たちは「東大式1項目法(SPQ)」と「Quantification and Quality Method(QQメソッド)」を組み合わせたハイブリッドな運用方法を推奨しています。 東大式1項目法(SPQ) SPQは、「過去4週間の平均的な健康状態について、出勤を100%とした場合の自身の仕事を評価してください」という1つの質問だけでプレゼンティーズムを測定する、非常に簡便な指標です。 メリット: 回答負担が少なく、高い回答率を期待できる: 従業員が気軽に回答できるため、調査の実施が容易です。 経営的インパクトを可視化: 算出された生産性低下度を平均給与と従業員数で掛け合わせることで、企業全体の総損失コストを概算でき、経営層への報告資料として非常に有効です。 デメリット: 不調の具体的な原因が不明: 「パフォーマンスが10%低下している」という結果は分かっても、その原因が「肩こり」なのか「睡眠不足」なのかまでは特定できません。 QQメソッド(Quantification and Quality Method) QQメソッドは、不調ごとのプレゼンティーズムを測定することができる、より詳細な評価が可能な指標です。具体的な不調の原因を深掘りし、施策の企画や評価に役立てます。 メリット: 影響度の大きい不調がわかる: 組織全体でのプレゼンティーズム損失コストの大きい不調や、一人当たりの損失コストの大きい不調を把握することができます。 デメリット: 不調が多いと回答量が多くなる: 不調ごとに回答しなければならないため、不調が多い方の回答量が増加します。このため、弊社では「最も影響度の高い不調」を一つ聴取するようにしています。 ハイブリッド運用の実践例 SPQとQQメソッドをもちいた事例をご紹介します。 1.SPQで全社的な損失コストを算出 全従業員の生産性損失コストを年次で追いかけ、経営層に報告しました。 結果として、全社で年間約709人月分の損失コストが発生していることが判明し、経営層は健康経営への本格的な投資を決断しました。 2.QQメソッドで不調の原因を特定 QQメソッドの調査結果から、特に「全身の疲労感・疲労」、「肩や首のこり」、「睡眠の質不調」が大きなコスト損失に繋がっていることが明らかになりました。 3.PDCAサイクルで施策を評価・改善 この結果に基づき、企業は「肩こり改善セミナー」や「睡眠改善セミナー」といった施策を実施しました。 施策の前後で再度QQメソッドで測定したところ、睡眠セミナーに参加した層では、明確に睡眠の質不調による生産性低下が改善していることが証明されました。 一方で、肩こり改善セミナーは参加者の生産性低下に大きな変化が見られず、次年度はより効果的な施策への見直しが検討されました。 このように、SPQでマクロな視点から経営インパクトを示し、QQメソッドでミクロな視点から施策の評価を行うことで、「どの不調に、どの施策を、どれくらいのコストをかけて実施すべきか」 という、経営に直結する判断が可能になります。 まとめ:健康経営を「測定だけ」から「成果創出」へ 企業の健康経営はより「投資対効果」が問われる時代に突入しています。単に調査を実施して数値を眺めるだけでは、もはや十分ではありません。本記事でご紹介したSPQとQQメソッドのハイブリッド活用により、以下の実現が可能になります経営層への説得力:年間709人月のような具体的な損失コストを可視化的確な施策立案:どの健康課題に優先的に取り組むべきかを明確化効果の定量評価:施策実施前後の変化を数値で証明プレゼンティーズム調査を真のPDCAサイクルに組み込むことで、健康経営は「コスト」から「投資」へと変わります。まずは自社の生産性損失の現状を正しく把握し、測定結果を次のアクションにつなげる一歩を踏み出してみませんか。健康管理システムWellaboSWPはアンケート機能を標準搭載しており、プレゼンティーズム調査を行うことが可能です。システムの機能詳細はこちらよりご覧ください。 執筆・監修WellaboSWP編集チーム 「機能する産業保健の提供」をコンセプトとして、健康管理、健康経営を一気通貫して支えてきたメディヴァ保健事業部産業保健チームの経験やノウハウをご紹介している。WellaboSWP編集チームは、主にコンサルタントと産業医・保健師などの専門職で構成されている。株式会社メディヴァの健康経営推進チームに参画している者も所属している。 WellaboSWP専門職チームが運営するオンライン健康管理室ウェラボの詳細はこちらから